いつもの一杯のコーヒー。その裏側にどんな「物語」があるか、ご存じですか?
ダイレクトトレードという言葉はよく聞くけれど、その意味や仕組みは、意外と知られていないかもしれません。
そんな“つながりのかたち”についてのお話です。
コーヒーの価格は、不透明な「先物市場」で決まっている
現在、世界のコーヒーの多くは、ニューヨークなどの先物市場で価格が決まっています。
しかしこの価格は、実際の生産コストではなく、投資マネーの動きによって左右されるのが現実。
これにより、以下のような問題が起きています。
- 生産者が赤字で働く状況が続いてしまう
- ロースターは安定した仕入れが難しくなる
- 私たち消費者も、値上げに振り回されやすくなる
つまり、コーヒー業界全体が「持続不可能」な構造になっているのです。
ダイレクトトレードは、コーヒーに関わるすべての人をつなぐ仕組み

ダイレクトトレード(Direct Trade)」とは、仲介業者を介さず、生産者とロースターができる限り直接的に取引を行う仕組みです。実際には、輸入手続きなど専門的で煩雑な業務が伴うため、一定の業務を信頼できる業者に委ねることもありますが、可能な限り適正な対価が生産者に届くよう配慮された取引形態です。
価格は先物市場の相場ではなく、生産にかかる実際のコストや豆の品質、そして築かれた信頼関係をもとに決定されます。
つまり、「いくらで売れるか」ではなく、「どのように育てられたか」に対して、お金が支払われる仕組みです。
これは単なる商取引ではなく、生産者との「関係性」を大切にする、新しいパートナーシップのかたちでもあるのです。
実例:TYPICAが変えようとしていること
宣伝のつもりはありませんが、日本発のダイレクトトレード・プラットフォーム「TYPICA(ティピカ)」は、まさにこの仕組みを世界に広げています。
Coffee Jadeでも、エチオピア産の豆をTYPICAを通じて仕入れており、今後はラインナップをさらに増やしていく予定です。
TYPICAの特徴は、中間業者を極力省き、生産者に適正な対価が届くよう設計されている点です。またどこにいくらの支払いがなされているのかもオープンにしていて、透明性が高いです。
生産者とのコミュニケーションを重視し、「顔の見える」関係の中で、高品質なコーヒーが届けられています。
たとえば2025年6月には、TYPICAは台湾の大手ブランドと、総額30億円規模の長期固定価格契約を締結しました。
これにより、生産者は将来の計画を立てやすくなり、ロースター側も安定的に高品質な豆を確保できるようになります。
このように、「顔の見える関係」だからこそ、持続可能で納得感のある取引が実現しているのです。
私たちができること:一杯のコーヒーを「誰から買うか」で選ぶ
ダイレクトトレードの豆は、スーパーで安価に並んでいるわけではありません。
でもその一杯の背景には、作り手の努力、自然への敬意、未来への投資が込められています。
選ぶことで支援する。
支援があるから続けられる。
そして続くから、美味しさもまた深まっていく。
私たち消費者にも、選ぶ力=つながる力があります。
まとめ:ダイレクトトレードは、コーヒーの未来を変える選択肢
ダイレクトトレードとは、生産者とロースターができるだけ直接つながることで、コーヒーの背景にある「人」や「環境」に正当な価値を支払う仕組みです。
従来の先物市場に依存した不透明な価格決定から脱却し、生産コストや品質、信頼関係に基づいた“持続可能な取引”を実現します。
TYPICAのような取り組みを通じて、顔の見える関係性が築かれ、生産者もロースターも、そして消費者の皆様も、納得のいくかたちで美味しいコーヒーが楽しめるようになります。
日々の一杯が、どこで、誰によって、どのように育てられたのか。
思いをはせて選ぶことが、未来のコーヒー文化を守り、育てていくことにつながると思います。
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