
緑の温室で出会う、“育つコーヒー”の静かな感動
「日本にもこんなところが」
そんな言葉が、思わず口をついて出る場所でした。

茨城県にある「コーヒーハウスとむとむ」は、知る人ぞ知る喫茶店。けれど、ただの喫茶店ではありません。店の裏手に現れるのはガラス張りの温室。扉を開けた瞬間、ほんのり湿った空気と、青々とした植物たちの香りに包まれます。
まるで亜熱帯の森に迷い込んだかのような感覚。
目に飛び込んでくるのは、しっかりとした幹に育ったコーヒーの木。枝には赤く実ったコーヒーチェリーがいくつも実っていて、温室でもこんなに育つのかと小さな感動です。
日本国内でコーヒーを栽培するのは非常に難しく、気温・湿度・日照の条件を整える必要があるとのこと。またカイガラムシといわれるコーヒーノキの天敵にも悩まされます。この温室という環境で長年試行錯誤を重ねてきたのでしょうね。

真っ赤に熟したコーヒーチェリー。ティピカ種。

黄色く実ったイエローブルボン種。

真っ白な花も咲いていました。

バナナもたわわに。
サイフォンの一杯
店内でいただくのは、温室で育ったコーヒー豆ではありませんが、数種類のストレートコーヒーと一押しのスペシャルティーコーヒーが選べます。
サイフォンという抽出方法は、理科の実験のようでどこか非日常。
アルコールランプの炎が揺れ、ガラスの器具の中で水が沸騰し、ゆっくりと上に押し上げられていきます。

座ったテーブル席から抽出作業は見られませんでしたが、熱々のコーヒーがフラスコに入ったまま運ばれてきます。約2カップ分あるのですが、1杯飲み終わって次のコーヒーを注いでも熱々のコーヒーが楽しめました。
温室で実ったコーヒーチェリーを見た後なので、ただの一杯ではなく、物語を味わっているような気持ちになります。
「育つ」ことを味わう——未来につながるコーヒーのかたち
とむとむで過ごした時間は、コーヒー好きにはぜいたくな時間でした。
温室で感じた「育つ」ということと、抽出される一杯の背景にある、「つくる」という手間。
それらがすべてつながって、目の前のカップに注がれていたんだと、実感する時間でした。
「気候変動で、そのうち飲めなくなるコーヒーもあるかもしれない」
そんな話も聞いたりします。
暑さに強い、病害虫に耐性のある品種改良も進められていますが、こういった温室栽培のコーヒーが広まることも未来のコーヒーのカタチかもしれませんね。

COFFEE HOUSE とむとむ 利根町店
- 住所:茨城県北相馬郡利根町横須賀804-1
- 営業時間:9:00〜20:00
- 定休日:無休
- 電話番号:0297-68-8154